インラインリンク(直リンク)と著作権侵害

Twitterにおけるリツイートが著作権侵害に該当するか否かが争われた事件判決に関し、気が付いたことをまとめておきます。

先週末は、知財学会の第37回判例研究会(報告者:安田和史氏)に参加してきました。その題材になった判決は、東京地判平成28年9月15日(平成27年(ワ)第17928号)「ツイッターRT事件」だったのですが、この判決は技術的事項の扱いに少し難しい点もあるようなので、研究会ではあまり深い議論をすることができなかった技術的注意点についてまとめておきたいと思います。

1.事件・判決の要約

本件は、氏名不詳者によって原告(写真家)の著作物である「本件写真」をツイッター(twitter)に無断で用いられたことに関し、(米)ツイッター社に対して、当該氏名不詳者らの発信者情報の開示を求めた事件です。

ここで、プロバイダ責任制限法4条1項1号に基づき発信者情報の開示請求をするためには、開示請求者の権利が侵害(本件では著作権侵害)されたことが明らかである必要があります。そして、その争点の一部に、

著作権を侵害するツイートをリツイートした場合、当該リツイート者も著作権を侵害したことになるのか否か

が含まれることになりました。

実際の事件では、アカウント1~5の発信者情報の開示が請求されたのですが、リツイートに関する事項に話を絞ると、図1のような状況が問題となっています。

図1

まず、アカウントAのツイートに表示されるドクロ画像(「本件写真」に相当)は著作権を侵害していることが前提です。このとき、アカウントBが、ドクロ画像を含むアカウントAのツイートをリツイートすると、アカウントBのタイムラインにも、ドクロ画像を含むアカウントAのツイートが表示されることになります。

このリツイート自体(「本件リツイート行為」に相当)は、アカウントBの行為であり、アカウントBのタイムラインにドクロ画像が表示されることも確かなことです。

本件判決は、当該リツイート行為による著作権等の侵害の明白性について以下のような判断をしました。

本件写真の画像が本件アカウント3~5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3~5の各URLに流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,それ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1項)に当たることはないと解すべきである。

また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像ファイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツイート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2) のURLからユーザーの端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らがこれを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を欠くというほかない。判決文 当裁判所判断2(1)

つまり、簡単に言うと、リツイートは「インラインリンク」の自動設定によって実現されており、「インラインリンク」は、公衆送信権や複製権などその他の権利も侵害しないとのことです。

ここで疑問となるのは、

「インラインリンク」を張る行為が著作権侵害とはならないと一般化してよいのか?

ということです。

2.インラインリンクとは

本件判決が採用したインラインリンクの定義は以下のものです。

インラインリンクとは,ユーザーの操作を介することなく,リンク元のウェブページが立ち上がった時に,自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて,リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいう。(甲14)判決文 前提事実(4)

この定義は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(経済産業省)」にも記載されているものであり、甲14号証はこれが提出されたのでしょう。

判決文では、引用されていないのですが、上記準則における「インラインリンク」の定義の記載箇所には、以下のような図も記載されています。同図からも分かるように、「インラインリンク」とは、一般に「直リンク」や「ホットリンク」とも呼ばれるリンクの形態を指すものです。

図2:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(経済産業省 平成29年6月改訂版)より

ただし、「インラインリンク」や「直リンク」の定義は、使用者によってブレもあり、上記準則に記載の定義においても、「リンク元のウェブページ」と「リンク先のウェブサイト」との関係が、同一サイト内や同一サーバー内になり得るのかが必ずしも明らかではありません。しかも、このことが「リンク」問題を難しくしているように思います。

3.リツイートはどのような仕組みなのか

実際のところ、ツイッターにおけるリツイートはどのように実現されているのでしょうか。調べてみると、図3のような仕組みであることが解りました。後の説明の都合上、アカウントAがツイートする際の画像のアップロード部分についても記載してあります。

図3

つまり、図3に示すように、アカウントAのタイムラインにドクロ画像が表示されるとき(図中赤矢印)も、アカウントBのタイムラインにドクロ画像が表示されるとき(図中緑矢印)も、同じツイッター社のサーバ(pbs.twimg.com)に保存されたドクロ画像のファイル(XXXX.jpg)が呼び出されているに過ぎないようです。

具体的には、アカウントAのタイムラインのHTMLファイルでも、アカウントBのタイムラインのHTMLファイルでも、

<img src=”https://pbs.twimg.com/media/XXXX.jpg”  >

というような同じコードが記載されているのです。もっとも、技術的観点から考えると、このような仕組みでリツイートが実現されているのは当たり前のことであり、判決文の前提事実や被告主張を注意深く読むと、上記のようなコーディングがされているのだろうことも窺い知ることができます。

ただし、このような場合も「インラインリンク」と呼ぶべきかは、難しい問題を含みます。

純粋にインターネット技術を論じる場合には、このような場合も「インラインリンク」というべきかもしれません。しかも、ツイッター社のサイト構成の場合、HTMLファイルは「twitter.com」から呼び出され、画像ファイルは「pbs.twimg.com」から呼び出されるように構成されているのですから、なおのこと「インラインリンク」と言い得るかもしれません。

しかしながら、著作権侵害の成立を議論する場合には、区別すべき「インラインリンク」もあるように思います。少なくとも、本件リツイート行為における画像表示方法は、従前から著作権侵害になるか否かが議論されてきた「インラインリンク(直リンク)」の態様と異なるものです。

4.キュレーションサイト問題における直リンク

同様に、インラインリンクの著作権侵害が議論になった事例として、キュレーションサイト問題があります。この事例は裁判によって争われた事例ではないので、DeNA社が公表した「第三者委員会調査報告書」の記載を参照しながら、この問題を振り返ってみたいと思います。

ただし、上記報告書では、「インラインリンク」という言い方ではなく、「直リンク」という言い方をしているので注意が必要です。報告書では、以下のように、画像使用態様が分類されています。

具体的な類型としては、まず、画像の使用態様により、①サーバ保存と②直リンク方式に大きく分類した。このうち①サーバ保存とは、画像をウェブサイトのサーバに複製し、保存する行為をいう。他方、ここでいう②直リンク方式とは、リンク先のウェブサイトの一部にリンク元のウェブサイトの画像等を表示するものであり、リンク先のウェブサイトをダウンロードすると、ユーザーの行為は何ら要せず、自動的にリンク元の画像等が表示されるものをいう。そのため、リンク先のウェブサイトを閲覧する者にとっては、リンク元の画像等がリンク先のウェブサイトに取り込まれた形で表示されるものである。報告書43頁

この報告書の定義と判決採用の定義(前掲準則の定義)では、 「リンク先」と「リンク元」の関係が逆になっていますが、「直リンク」と「インラインリンク」は同義であるといえるでしょう。下記図4は、上記定義に従った①サーバ保存方式と②直リンク方式とを図示したものです。

図4

そして、この報告書では、②直リンク方式の画像使用態様の著作権法違反の可能性について判断をしなかったものの、以下の事実を認定しています。

問題のある画像については、許諾を得た画像へと差し替えるか、直リンク方式へと変更することになった。なお、直リンク方式とすることによって、著作権法違反とならないかについては、確定した最高裁判例などは存在しておらず、DeNAにおいても、直リンク方式に変更することで、著作権侵害の問題を完全に解決できるとまでは考えていなかった。この点、DeNAにおいては、直リンク方式とすることで著作権法違反のリスクを完全に払拭できなくとも、少なくとも「黒」ではない状態になれば、事業に乗り出してもよいという判断をした。報告書56頁

つまり、運営会社の認識としては、直リンクが著作権侵害に該当するか否かについては少なくとも「黒」ではないと考え、本来は許諾を得るべき画像の使用態様を②直リンク方式へ変更することで著作権法違反のリスクを解消しようとしたようなのです。

そして、この直リンク化処理をした結果は、多くの人が知る通りです。報告書にも記載されているように「直リンク化処理を実施した直後から、画像の引用元のウェブページ等の運営元から、MERYのウェブサイトからのトラフィックの集中により、サーバがダウンしてしまったなどというクレームが相次いだ。」などの問題が発生し、その他の多くの問題も相まって、運営会社は大きな批判を受けました。

ところで、図3と図4の違いに着目していただきたいのですが、ツイートにおける画像表示も、リツイートにおける画像表示も、キュレーションサイト問題における分類では、①サーバ保存方式に属する画像使用態様なのです。つまり、世間一般的にも「インラインリンク」と「直リンク」は同義と考えられているし、本件判決とこの報告書が採用した定義も同義であり、技術的には「インラインリンク」が用いられていることは確かなことなのですが、その問題となっている箇所が違うのです。

したがって、本件判決が「インラインリンク(直リンク)」の仕組みを根拠にリツイート行為が非侵害であることを導いているとしても、著作権侵害の状態を「インラインリンク(直リンク)」へ変更することで、その侵害状態を解消できること示すものではないと考えるべきなのです。つまり、キュレーションサイト問題でいうところの「少なくとも「黒」ではない」ものが、結局は「白」であったと確認されたのではないのです。

5.まとめ

本件判決は、「インラインリンク(直リンク)」の仕組みを根拠に本件リツイート行為が著作権を侵害するものではないと導いているのですが、本件リツイート行為における画像表示方法は、従前から著作権侵害になるか否かが議論されてきた「インラインリンク(直リンク)」の態様と異なるものです。少なくとも、許諾を得るべき画像の使用態様を、「インラインリンク(直リンク)」方式へ変更することで著作権侵害を解消できるということが示されたわけではありません。

一方、「インラインリンク(直リンク)」方式の画像では著作権侵害の問題は生じないとする見解も有力らしいので、この点について最終的見解が早期に望まれるところです。

下記画像表示Aと画像表示Bは、同じ画像を①サーバ保存方式と②直リンク方式のそれぞれで表示したものです。

画像表示A:Wikimedia Commonsの画像ファイルを①サーバ保存方式で表示
画像表示B:Wikimedia Commonsの画像ファイルを②直リンク方式で表示

上記画像は著作権フリーの画像なのですが、もしこれが著作権処理をしていない画像であると仮定すると、「インラインリンク(直リンク)」方式の画像では著作権侵害の問題は生じないとする見解では、画像表示Aは著作権侵害であっても、画像表示Bは著作権侵害ならないことになります。通常の感覚からすると、そのような結論は受け入れがたいのではないでしょうか。

また、画像表示Aは著作権侵害であっても、画像表示Bは著作権侵害ならないとしてしまうと、そのことを脱法的に悪用する者も現れることになります。そして、キュレーションサイト問題で起こったことは、まさにそのような行為でした。

多くのWeb技術者は「直リンクは悪(避けるべきもの)」と考えていると思います(例えば前掲報告書123頁)。一方、この場合の「直リンク」の意味には、技術的な「インラインリンク」のすべてが含まれているのではないことにも留意が必要です。そして、従前①サーバ保存方式として整理されていた画像表示方法にも、純粋な技術論としての「インラインリンク」が用いられています。本件のリツイートの問題は、①サーバ保存方式に属する画像表示方法における「インラインリンク」なのです。一般に「インラインリンク」と「直リンク」は同義であると考えられてるだけにリンク問題の本質を見失わないように心掛けていきたいものです。

・2018年7月14日追記

上記記事に、法律的観点からの検討を追加して再編集したものが、今月号のパテント誌に掲載されました。ウェブ公開はまだですが、ウェブ公開されましたら、こちらのページからもリンクを張らせていただきます。

  

・2018年9月19日追記

パテント誌に掲載された拙稿「リンクと送信可能化行為」がウェブ公開されましたので、お知らせいたします。

リンクと送信可能化行為, パテント 71(8), 60-72, 2018-07.