「日本版フェアユース」 in 情報処理技術

第196回通常国会において成立した「著作権法の一部を改正する法律」 の施行期日が平成31年(2019年)1月1日に迫っていますので、 「人工知能(ディープラーニング)」「リバースエンジニアリング」「解析用データベース」 など情報処理技術に大きく関連する新30条の4について少し解説しておきたいと思います。

「平成30年著作権法改正」では、主に以下の4点について権利制限規定の整備が行われました。

  1. デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
  2. 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
  3. 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
  4. アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等

この「柔軟な権利制限規定」は、過去に「日本版フェアユース」と呼ばれた規定の導入の再チャレンジとも言えるものです。「日本版フェアユース」と呼ぶには不十分であるとの意見もあるのを承知していますが、これでも十分に意欲的な法改正であり、すくなくとも 「人工知能(ディープラーニング)」「リバースエンジニアリング」「解析用データベース」 などの情報処理技術に関する著作権実務に大きな影響を与えることになるでしょう。 ここでは「1. デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備 」のうち、新30条の4を中心に解説します。

なお、「権利制限規定」とは、 著作権者の権利を制限し、著作権者の許諾なく著作物を利用することができる例外的な場面を定めた規定のことをいいます。


1.柔軟な権利制限規定と3つの行為類型

今回整備された権利制限規定の位置付けを理解するためには、権利者に及び得る不利益の度合いに応じて分類された3つの行為類型の層の考え方が重要です。文化庁が公表した「著作権法の一部を改正する法律 概要説明資料」に従えば、著作権法の権利制限規定は、「権利者に及ぶ不利益の度合い」と「社会的意義・公共性等」の関係で3つの層に分類されます。「柔軟な権利制限規定」とは、この3つの層のうち、権利者に及ぼす不利益が少ない第1層と第2層について整備された「新30条の4」と「新47条の4」と「新47条の5」のことをいいます。

2.著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用

「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」とは、権利者の利益を通常害さないと評価できるとされる[第1層]の2つの行為類型のうちの1つであり、2011年頃の「日本版フェアユース」の議論ではC類型(著作物の表現を享受しない利用)と整理されていたものの流れを汲むものです。

C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用

「文化審議会著作権分科会報告書」(2011年1月)

上記C類型の議論は、その後失速してしまったのですが、今回の法改正では、かなり意欲的な柔軟性の高い権利制限規定が整備されました。具体的には、権利制限を正当化する根拠に着目した「より抽象的な要件」 が規定され、一方で予測可能性の観点から現行規定を例示として整理・統合されています。

今回の法改正で新たに規定された30条の4は、以下のような条文となっています。ただし、太字は筆者が追加したものです(以下同じ)。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

平成30年改正著作権法 新30条の4

3.ディープラーニング(人工知能)における著作物利用

柔軟な権利制限規定」の導入の目的の一つにデジタル化・ネットワーク化の進展に対応することがあります。このデジタル化・ネットワーク化の進展とは、「第4次産業革命」といわれるIoT・ビッグデータ・人工知能などの技術革新のことをいい、その代表例としてディープラーニング(人工知能)における著作物利用の場面が想定されています。

たしかに現行法の47条の7には、「情報解析」とは「…比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう」と定義されているのですが、この規定からディープラーニングで採用されている「代数的」「幾何学的」な解析が対象外となるのかは正直なところ疑問があります。偉い人たちは「A+B」は足し算だから「代数的」だけど、「(A+B)÷2」は平均だから「統計的」とか考えているのでしょうか?そもそも「統計的」なんて外延がはっきりしない要件なんて必要なかっただけなのかもしれません。

(情報解析のための複製等)
第四十七条の七 著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

平成30年改正にて削除の旧47条の7

細かい文言の解釈はともかく、今回の法改正では、人工知能(AI)開発のためのディープラーニングが「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の重要な対象例となっていることは明白です。

一方、ここで注意を喚起しておきたいのは、

ディープラーニングであることを理由として
「柔軟な権利制限規定」の適用を受け得るのではない

ということです。つまり、一般に「ディープラーニング」と呼ばれる技術であっても著作権侵害となってしまうこともあるです。

●「The Next Rembrandt」の例

プロジェクト「The Next Rembrandt」では、346点のレンブラント作品をデジタル化し、ディープラーニングアルゴリズムを用いて作品の特徴を分析し、レンブラント作品に共通する題材を「新たなレンブラント作品」として出力しました。以下に示すようにディープラーニングを用いて作製された「新たなレンブラント作品」は、見るからに「レンブラントっぽい」作品となっています。従いまして、この「The Next Rembrandt」プロジェクトは、ディープラーニングの成功例としてもよく知られています。(解説例:

The Next Rembrandt

ところで、レンブラントは17世紀の画家なので、上記のようにディープラーニングを用いて 「新たなレンブラント作品」 を作製しても著作権法上の問題は生じないのですが、これと同じことを著作権が存続している画家の作品で行った場合、「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受け得るでしょうか?

この点、まだ正式な司法判断はされていないものの、少なくとも立法担当者の見解としては、AIによる情報処理の結果として著作物を一般公衆に視聴させる場合「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受けないとしていますので、十分に注意が必要です。また、条文の規定振りを考えても「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」となっているのですから、AI成果物を視聴させるような場合まで著作権者の許諾なく著作物を利用することができる例外を認めるものではないと理解すべきでしょう。

○山本(和)委員 今回の法案は、著作物利用の円滑化を図り新しいイノベーションを促進するということと、柔軟な権利制限規定を整備するということが目的となっています。これは、例えばAIにディープラーニングをさせて、さまざまな著作物を含んだデータを利用していくことを前提として考えられたものなんだろうなとは思うんですけれども、その前提として、著作権者の利益を不当に害することがない場合に限るということを条文の中で繰り返し言われています。
 これは、権利者の不利益が生じないようにということを言っておられるのかなと思うんですが、具体的に、どのように権利者の不利益が生じる可能性があって、それが生じないようにと考えているんだろうと思うんですが、このあたりの御所見をお伺いします。
○中岡政府参考人 お答え申し上げます。
 例えば、AIの開発のためにAI学習用データとして著作物を利用する行為は、通常AIによる学習の深化を専ら目的として行われるものでございまして、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とする行為には該当しないものと考えられますので、新三十条の四の適用を受けるものと考えております。
 一方、AIによる情報処理の結果として著作物を一般公衆に視聴させる場合には、この行為は、通常、視聴者等の知的、精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられるものと評価できるというものと考えられまして、そういった場合には本条の適用を受けないということになるわけでございます。

第196回国会 衆議院文部科学委員会 第5号(平成30年4月6日)

・簡単な例として以下のように理解するとわかりやすいかもしれません。

新30条の4の適用
あり
レンブラントの真作を学習用データとして利用して、
レンブラント作とされる絵の真贋を判定するAIを開発する
新30条の4の適用
なし
レンブラントの真作を学習用データとして利用して、
レンブラント風の絵を出力するAIを開発する

ディープラーニングであるからといって、ただちに「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受け得るのではないことは、切に注意を促しておきたいところです。


4.プログラムのリバースエンジニアリングの適法化

今回導入された 「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の大きな目玉の一つとして「プログラムのリバースエンジニアリングの適法化」があります

しかしながら、たとえ条文リテラシーのある人が見たとしても、新たに導入された「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の条文からは、プログラムのリバースエンジニアリングが適法化されたことは直ちには読み取れないのではないのではないでしょうか?

なので、ここでは強調しておきたいのです。

プログラムのリバースエンジニアリングが
適法化されましたよ!!

ただし、後述するように、「リバースエンジニアリング」と呼ばれるすべての行為が適法化されているのではないことには注意が必要です。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

平成30年改正著作権法 新30条の4

なお、上記条文からリバースエンジニアリングの適法化がどのように導かれるのかというと、 表現と機能の複合的性格を持つプログラムの著作物における対価回収の機会が保障されるべき利用は、プログラムの実行などによるプログラムの機能の享受に向けられた利用行為であるので、リバースエンジニアリングと言われるようなプログラムの調査、解析目的のプログラムの著作物の利用は、プログラムの実行などによってその機能を享受することに向けられた利用行為ではないとの整理だそうです。

○小林(茂)委員 サイバーセキュリティー対策のために、ソフトウエアの調査、解析の過程で、ソフトウエアのいわゆるリバースエンジニアリング、つまりコンピューター用の言語を人間が理解できる言語に変換する処理を行う、このことは今回の柔軟な権利制限の対象となるのか、どのように条文を解釈したらいいのか、教えてください
○中岡政府参考人 お答えいたします。
 改正案の取りまとめに先立ちまして、制度設計のあり方につきまして文化審議会で審議を行いました。平成二十九年の審議会の著作権分科会の報告書におきましては、表現と機能の複合的性格を持つプログラムの著作物、これにつきましては、対価回収の機会が保障されるべき利用は、プログラムの実行などによるプログラムの機能の享受に向けられた利用行為であると考えられると整理されております。
 改正案におきましては、これを踏まえまして法制化を行ったものでございまして、委員御指摘のリバースエンジニアリングと言われるようなプログラムの調査、解析目的のプログラムの著作物の利用は、プログラムの実行などによってその機能を享受することに向けられた利用行為ではないと評価されるものでございますので、新三十条の四の著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用に該当するものと考えております。

第196回国会 衆議院文部科学委員会 第5号(平成30年4月6日)

ところで、プログラムのリバースエンジニアリングの適法化の議論は近年に始まったことではありません。少なくとも文化庁が平成6年5月に公表した「コンピュータ・プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議報告書―既存プログラムの調査・解析等について―」でも既に問題の指摘がされ、「知的財産推進計画2008」(平成20年6月18日知的財産戦略本部決定) では、「リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する」ことが計画に組み入れられていました。(その他、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会(第2回)「 早急に対応すべき課題について」(2008年)も参照)

⑤リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する
 革新的ソフトウェアの開発や情報セキュリティの確保に必要な範囲において、コンピュータ・ソフトウェアのリバース・エンジニアリングの過程で生じる複製・翻案を行うことができるよう2008年度中に法的措置を講ずる。(文部科学省)

知的財産推進計画2008(平成20年6月18日知的財産戦略本部決定)

このような経緯を考えると、10年も待たせておきながら言われなければ気が付かないような法的措置に終わってしまったことを残念に思わざるを得ないのです。そもそも、柔軟性と予測可能性を両立するために、包括的規定と例示規定の2段構えの規定としたのですから、そのアプローチを「リバースエンジニアリング」にも活用すれば良かったようにも思います。言われなければ気が付かないような法的措置に予測可能性を期待することはできないでしょう。

・すべてのリバースエンジニアリングが適法なのか?

既に指摘していることなのですが、「リバースエンジニアリング」と呼ばれるすべての行為が適法化されているのではないことには注意が必要です。 このことは言葉の問題の影響も大きいのですが、「リバースエンジニアリング」といった場合、 既存の製品を調査・解析してその構造や製造方法などの技術を探知する行為を指すのか、その結果を利用して新しい製品を開発する行為までを指すのかで、定義に幅があるので注意が必要なのです。

一方、立法担当者(文化庁)の見解では「ソフトウェアの調査・解析のため、コンピュータ言語で書かれた内容を人間が読むことができる言語に変換等する行為」が 「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受けられるとしているものの、どの範囲の「リバースエンジニアリング」までが「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受けられるのかについて明らかになってはいないのです。「リバースエンジニアリング」の定義に幅があることは文化庁も理解しているはずのものですから、もう少し配慮をして欲しかったところです。

リバース・エンジニアリングという用語の定義は必ずしも確立されておらず、既存の製品を調査・解析してその構造や製造方法などの技術を探知するとともに、その結果を利用して新しい製品を開発することまで指して用いられることもある…。

コンピュータ・プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議報告書―既存プログラムの調査・解析等について―(平成6年5月文化庁)

「リバース・エンジニアリング」の語は,既存の製品を調査・解析してその構造や製造方法などの技術を探知するとともに,その結果を利用して新しい製品を開発することまで指して用いられることもある。

文化審議会著作権分科会報告書(平成29年4月文化庁)

結局のところ、「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受け得る「リバースエンジニアリング」もあれば、受けられない「リバースエンジニアリング」もあるのです。この点は「ディープラーニング(人工知能)」の場合と同じなのです。

最終的には司法の場で具体的に判断される問題であることを承知の上で、少し踏み込んで私見を述べると、既存のプログラムを調査・解析して得られた知見に基づいて新しいプログラムを開発すると、元のプログラムの対価回収の機会が保障されるべき利用市場と衝突する虞があるので、「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」の適用を受けられないこともあるだろうと思われます。したがって「リバースエンジニアリング」を伴うプログラム開発には慎重な判断が必要でしょう。


5.解析用データベースと新30条の4のただし書き

今回の法改正では、現行の47条の7は「柔軟な権利制限規定(新30条の4)」に包摂されます。つまり、現行の47条の7は削除されて新30条の4の一部となるのです。

ところで、現行の47条の7と新30条の4を見比べると、制限される利用態様「記録又は翻案」であったものが「いずれかの方法によるかを問わず、利用することができる」となった一方で、ただし書きの記載が大きく変更されています。従いまして、「解析用データベース」も自由利用ができるようになってしまったようにも見えるかもしれません。

(情報解析のための複製等)
第四十七条の七 著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

平成30年改正にて削除の旧47条の7

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 <略>
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 <略>

平成30年改正著作権法 新30条の4

この点、立法担当者の見解としては、現行47条の7のただし書きの考え方は、新30条の4にも承継されているとのことです。

○小林(茂)委員 安全面が用意されたということです。
 これに関連して、例えば、情報解析を行う者に利用してもらうために、販売されているデータベースを購入せずに無断で利用するということは認められるのでしょうか。教えてください。
○中岡政府参考人 お答えいたします。
 著作権者の利益を不当に害することとなる場合に当たるか否かは、他の規定、先ほどの三十五条の第一項等と同様に、著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的市場を阻害するかという観点から、最終的には司法の場で具体的に判断されることになります。
 この点、現行の四十七条の七でございますが、これは、電子計算機による情報解析のための複製は、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とするものではなくて、著作権者の利益を通常害するものではないと考えられたことから、原則として権利制限の対象とすることとする一方で、情報解析を行う者の用に供するために作成されましたデータベースの著作物を複製する場合には、この当該複製が、当該データベースの提供に関する別途市場がございますので、その市場と衝突をし、著作権者の利益を不当に害することとなる可能性が高いと考えられましたことから、例外的に権利制限規定を適用しないこととした趣旨であると考えられます。
 新三十条の四におきましても、このような考え方は基本的には変わらないものと考えられますことから、著作権者が自己が著作権を保有する大量の著作物を容易に情報解析できる形で整理したデータベースを提供している場合に、当該データベースを情報解析を行う目的で著作権者に無断で複製する等する行為は、当該データベースの提供に関する市場と衝突するものとして、著作権者の利益を不当に害することとなる場合に当たるものと考えております。

第196回国会 衆議院文部科学委員会 第5号(平成30年4月6日)

ここで注意しておきたいことは、新30条の4のただし書きの考え方が現行47条の7のただし書きの考え方と基本的に変わらないとしても、現行47条の7のただし書きは「記録又は翻案」をすることができない場合を定めるものであって、新30条の4のただし書きは必ずしも「すべての利用」をすることができない場合を定めるものだということです。つまり、「記録又は翻案」をすることができない場合は、新30条の4の規定でもすることができないのですが、新30条の4では「記録又は翻案」以外もできるようになったのですから、解析用データベースの活用方法に関しては自由度が高まったのです。

特に、人工知能(AI)の学習に用いるデータセット(データベース)に関する自由度はかなり広がったことを理解しておくべきでしょう。この場合に気を付けるべきことは、著作権者の利益を不当に害さないようにしなければならないことになります。